草の森大冒険

ナンセンスの大家、草森紳一の書庫「任梟盧」を冒険します。

大掃除

6月2日
高山さんに案内していただき、初めて任梟盧を見る。やはり、生前に一度ここの草森さんを訪ねるべきだったな、と思う。

白い外壁は、三か所ほど壊れかけており、南面は頭の入りそうな穴が開き、そこから蔦の芽が顔を出している。高山さんたちが、ビニールで覆ってくれたので、かろうじて雨風の侵入を防いでいる。窓枠は腐食し、剥がれ落ちてしまっている。弟の草森英二さんによれば、亡くなる3年前に帰ってきたのが最後であるようなので、もう5年以上も主人を待ち続けている空き庵なのだ。なぜか深川の芭蕉庵を連想した。

中に入ると、玄関からすでに壁面は書棚になっていて、古びた本たちが所狭しと並んでいる。蜘蛛の巣と埃で無人の状況がわかる。そこで、まずは掃除機を持ち込んで、大掃除をすることにする。蟻や虫に食われて、壁がボロボロになっているトイレも、ともかく使えるようにしようということになった。

6月18日
大掃除。掃除機がすぐに目詰まりし、3回ほど中のゴミを捨てた。トイレと半地下風の奥の部屋が最も荒れている。本の一部は、湿気に侵され膨らんでカビが生えている。これは、時間がかかるなあ、と覚悟する。ともかく、なんとか人が作業できる環境を作った。

6月25日
書棚にそれぞれエクセル風の番地をつけて、セルごとの写真を撮ることにする。たとえば、いー1−2 というふうに、しかし、ここは中国文学の草森さん、千字文がいいと思う。やはり天ー1−1から始めよう。天地玄黄宇宙洪荒…はそれぞれの壁面、もしくは部屋を指す。まずは南壁に番地付け。

7月9日
草森さんと高校の同級生、及川裕さんが手伝いに来てくれた。何十年ぶりの再会だ。息災でなにより。学生時代に入り浸った「川」という喫茶店のマスターである。その及川さんが、当時のままのコーヒーを入れてきてくれた。心のこもった懐かしいコーヒーだ。口に含んだら、自然に目をつむってしまった。ブラックだが、まろやかで本当に美味しかった。マスター、ありがとう。

及川さんに東面に番地をつけてもらった。後は私がデジカメで写真を撮ればよい。デジカメは1400万画素位で撮ると、拡大すれば文庫本のタイトルまで読めるから便利なのである。

7月16日
高山さんから、簡体字の入力法を聞かれたので、模索する。簡体字は、現代中国の口語文字である。我々の使っている古典漢字は、繁体字というらしい。ともかく、簡体字繁体字の対比表が見つかったので、コピーしてエクセルに張り付けた。これで、方法が見つかった。文字を探す手間はかかるが、こちらで中国語を読めない以上、仕方がない。

さあ、次回からは、ようやく書物の紹介ができそうである。